Fed新提案が暗号資産市場を揺らす──投資家が注視すべき構造変化

Fed新提案が暗号資産市場を揺らす──投資家が注視すべき構造変化

こんにちは、ベトナム資産形成研究所のリンです。

ハノイから今日もベトナム株式市場、そして周辺の金融市場の話をお届けします。

2025年5月21日、米連邦準備制度(Fed)が暗号資産関連機関に対する新たな規制提案を示したとCafeFが報じました。この提案は、暗号資産に関連する業務を行う機関が「適格な関連会社(qualified affiliate)」を通じてのみ活動することを義務付ける内容とされています。一見すると米国内の話に見えますが、グローバルな資本フローに接続されたアジアの投資家にとっても、無視できない構造的変化を含んでいます。

Fedのような中央銀行が暗号資産の取り扱いルールを明示的に提案するのは、規制の「グレーゾーン」が縮小していくことを意味します。これは市場参加者にとって一方的なネガティブではなく、制度的な成熟のプロセスとも読めます。ただし、移行期には相応の不確実性が伴います。

目次

【ポジティブ要因】

  • 制度的明確化による長期的な信頼性向上:Fedが規制の枠組みを示すことで、機関投資家が暗号資産市場に参入しやすい環境が整備される方向性が示されました。制度の「グレーゾーン」が縮小すれば、長期的には市場の透明性が高まるとみられます(出典:CafeF・5月21日)。
  • 適格関連会社モデルによるリスク分離の可能性:提案された「適格な関連会社」を通じた業務形態は、既存の金融機関が暗号資産業務を本体から分離して管理する仕組みを促す可能性があります。これはシステミックリスクの局所化という観点から、金融安定性に寄与する側面があります。
  • アジア市場への規制波及が「基準整備」の契機に:米国の規制提案はしばしばアジア各国の制度設計に影響を与えます。ベトナムを含む新興国が暗号資産の法的枠組みを整備する際、Fedの提案が参照基準となり得ます。ベトナム政府は2024年以降、デジタル資産に関する法整備を段階的に進めており、外部基準の存在は議論の加速につながる可能性があります。

【リスク要因】

  • 移行期コストと市場流動性の低下懸念:「適格な関連会社」設立・維持には相応のコストが発生します。中小規模の暗号資産関連機関が対応できない場合、市場参加者の減少や流動性の一時的な低下が生じるリスクがあります(出典:CafeF・5月21日)。
  • 規制の最終形が未確定である点:今回はあくまでも「提案(proposal)」の段階です。Fedの最終的な規則制定までには意見公募・修正プロセスが残っており、内容が変更・強化・緩和されるいずれの方向にも動き得ます。現時点の提案内容を「確定した規制」として読み込むことには慎重さが必要です。
  • ベトナム国内の暗号資産規制との整合性リスク:ベトナムでは暗号資産の法的位置付けが依然として発展途上にあります。米国規制の影響を受けたグローバル機関がアジア事業を再編する過程で、ベトナム国内の暗号資産関連サービスの提供形態が変化するリスクも否定できません。

【今後の焦点】

  • Fedが意見公募後に提案をどの程度修正・確定させるか、またその時期──これが市場の不確実性を解消するうえで最も重要な変数となります。
  • ベトナム国家銀行(SBV)および財務省が、米国発の規制動向を受けてデジタル資産関連の国内制度整備をどのペースで進めるか。

ハノイから、率直にお伝えします

ベトナム証券業界で観察してきた立場から、率直にお伝えします。

私がベトナムの証券会社に勤めていた2022年から2025年の間、暗号資産は常に「制度の外側にある資産クラス」という位置付けでした。顧客から問い合わせがあっても、証券会社として正式に取り扱える商品ではなかったため、制度的な議論を注意深く追う習慣がつきました。今回のFedの提案は、その「制度の外側」が少しずつ「制度の内側」に取り込まれていく過程の一コマとして捉えています。

ハノイ現地の投資家は、暗号資産に対して「高リターンの投機手段」として関心を持つ層と、「規制リスクが怖くて近づけない」という層に二極化している印象があります。Fedの動きが制度的成熟を示すものであれば、後者の層が徐々に市場に参加しやすくなる環境が整う可能性はあります。ただし、それが現実になるには国内法整備という別のハードルが残っています。── 私はそう思います。

日本人投資家が知っておくべきこと

日本では2017年の改正資金決済法以降、暗号資産の法的枠組みが比較的早期に整備された経緯があります。その観点から見ると、Fedの今回の提案は「日本がすでに経験した制度化プロセスの米国版」とも読めます。日本の投資家には、この構造変化を「既知のパターン」として冷静に分析できる素地があるのではないでしょうか。

一方で注意すべきは、米国規制の影響がグローバルな取引所・カストディ機関の業務形態を変える可能性です。日本の投資家が利用している海外暗号資産サービスの中には、Fedの規制提案に対応するために利用規約や提供サービスを変更するケースが出てくる可能性があります。規制の「最終形」が確定する前に、利用中のサービスの動向を定期的に確認しておくことが実務的な対応として考えられます。

また、ベトナム株式市場への投資という文脈では、暗号資産規制の動向が直接的な影響を与える局面は現時点では限定的です。ただし、グローバルなリスクオフ局面においては、暗号資産市場の混乱が新興国株式市場の資金フローに波及するケースがあることは、過去の事例(2022年のTerraLUNA崩壊後の新興国株安など)が示しています。構造的なリスク要因の一つとして認識しておくことには意味があります。

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── ベトナム資産形成研究所・編集部(執筆:リン)

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本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の購入・売却を推奨するものではありません。投資判断は必ずご自身の責任において行ってください。
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