VHM(ティッカーシンボル:VHM)、正式名称ヴィンホームズ(Vinhomes JSC)は、ベトナム最大の住宅開発業者です。
Vingroup(VIC)の傘下にある住宅開発専業の企業として、Royal City、Times City、Smart City、Ocean City、Grand Park等、ベトナム各都市で大型住宅団地を展開してきました。総土地保有面積は2024年12月末時点で約1.88億平方メートルに達し、ベトナム最大の土地バンク(Land Bank)を保有しています。
HOSE上場、VN30構成銘柄、外国人保有上限(FOL)が満杯に近い銘柄として知られ、ベトナム不動産市場の代表的企業として、国内外の投資家から注目される銘柄の一つです。
本記事では、Vinhomesの企業構造を、VICからの分離経緯・事業セグメント・財務基盤・FOL構造・構造的強みと課題の各軸から整理してお届けします。
なお、本記事は事実報道です。特定の銘柄の売買を推奨するものではなく、Vinhomesの企業構造を客観的に解説するものです。
1. VICからのスピンオフと上場経緯
Vinhomesの起源
Vinhomesの法人としての起源は、2008年に設立された「BIDV-PP都市株式会社」(後に「Hanoi Southern City Development Joint Stock Company」)に遡ります。当初の資本金は300億VND規模でした。Vingroup(VIC)が傘下に取り込んだ後、住宅開発事業の中核として位置づけられてきました。
2014年から「Vinhomes」ブランドの本格展開が始まり、Vingroupグループ内で住宅開発事業を専門に担う体制が整えられていきました。
(出典:Vinhomes公式・Vietstock)
2018年5月のHOSE上場
2018年2月、社名が「Vinhomes Joint Stock Company」に変更され、資本金も28,365億VNDへ増資されました。同年5月17日、HOSE(ホーチミン証券取引所)に上場し、ティッカーシンボル「VHM」での取引が開始されました。
このIPO(新規株式公開)は、当時のベトナム史上最大規模であり、約13.5億USDを調達する歴史的な案件となりました。発行済み株式の約10%が公開され、上場初日の取引で、Vinhomesは時価総額でベトナム第2位の上場企業に位置づけられました(第1位は親会社のVingroup)。
(出典:Wikipedia “Vinhomes”・Vietnam Plus 2018年・Vinhomes公式)
このIPOは海外メディアからも高く評価され、IFR Asia(International Financing Review Asia)による「Frontier Markets Equity Issue 2018」、The Asset誌による「Best IPO in Vietnam」、Finance Asia誌による「Best Vietnam Deal」などの賞を獲得しました。
(出典:Vietnam Plus 2018年12月)
主要なマイルストーン
上場前後からの主要なマイルストーンを整理すると、以下のようになります。
- 2008年:法人設立(BIDV-PP都市株式会社)
- 2014年:「Vinhomes」ブランドの本格展開開始
- 2018年5月17日:HOSE上場(ティッカー:VHM)
- 2018年:Vinhomes Ocean Park、Vinhomes Smart Cityの大型プロジェクト開始
- 2018年:Landmark 81(Vinhomes Central Park内、ベトナム最高層ビル・81階・461m)竣工
- 2019年:Vinhomes Grand Park(ホーチミン)プロジェクト開始
- 2024年:Vinhomes Royal Island(ハイフォン)プロジェクト開始
- 2025年:Vinhomes Wonder City、Vinhomes Green Paradise(Can Gio)等の新規プロジェクト
(出典:Vinhomes公式・Vinhomes Corporate Presentation May 2025)
株主構成
Vinhomesの株主構成は以下の通りです。
- Vingroup(VIC):過半数保有(親会社)
- Government of Singapore Private Ltd.(GIC):約5.74%
- その他機関投資家・個人投資家
(出典:Wikipedia “Vinhomes”・Vinhomes IR)
2. 事業セグメントの全体像
Vinhomesの事業は、大型住宅団地開発を中核として、以下のように整理できます。
大型住宅団地開発(中核事業)
Vinhomesは、単なる個別住宅の開発ではなく、「街区規模の複合都市開発」を専門としています。学校、病院、商業施設、公園等を一体的に整備する「街づくり」コンセプトが特徴です。
ハノイエリアの主要プロジェクト
- Vinhomes Royal City(ハノイ南西部・5,000戸超のラグジュアリー複合団地)
- Vinhomes Times City(ハノイ・12,000戸超の大規模複合団地)
- Vinhomes Smart City(ハノイ西部・2018年〜)
- Vinhomes Ocean Park(ハノイ東部・2018年〜・最大級の街区)
- Vinhomes Ocean Park 2、3(2022年〜の拡張)
ホーチミン市エリアの主要プロジェクト
- Vinhomes Central Park(2014年〜・Landmark 81を含む)
- Vinhomes Grand Park(2019年7月開始・ホーチミン東部)
- Vinhomes Golden River
地方都市・新興エリア
- Vinhomes Royal Island(ハイフォン・2024年〜)
- Vinhomes Wonder City(2025年新規)
- Vinhomes Green Paradise(Can Gio・ESG指向都市開発として展開)
(出典:Vinhomes公式・Corporate Presentation May 2025)
商品ブランド体系
Vinhomesは、購入者の所得層に応じて、以下の商品ブランドを展開しています。
- Vinhomes Sapphire:中所得者層向け
- Vinhomes Ruby:高所得者層向け
- Vinhomes Diamond:超富裕層向け
(出典:KB Securities Vietnam・VHM Company Report)
関連事業
Vinhomesは、住宅団地内に以下の関連事業を統合的に整備しています。これにより「街づくり」コンセプトを実現しています。
- Vincom Retail(VRE)系列の商業施設(別上場・VIC傘下)
- Vinmecの病院・医療施設
- Vinschool等の教育施設
- VinUni大学関連施設
- 住宅団地内の公共インフラ(公園・スポーツ施設等)
これらは、Vinhomes自体の事業ではなく、VinグループのVin-ブランドファミリー全体での統合的な街づくりとして機能しています。
事業ポートフォリオの戦略的特徴
Vinhomesの事業ポートフォリオは、以下のような戦略的特徴を持っています。
- 大型住宅団地中心の事業集中(分散型ではない)
- 「街づくり」コンセプトでの差別化(単独住宅開発ではない)
- 政府関係・大型開発許可の構造的優位性
- Vin-ブランドファミリー全体の活用
- 中所得層から超富裕層まで幅広い商品ブランド体系
(出典:Vinhomes統合報告書・各社IR)
3. VHMとVICの構造的関係
Vinhomes(VHM)は、Vingroup(VIC)の傘下にある独立した上場子会社です。両者の関係を整理しておくことは、投資判断において重要な前提となります。
| 項目 | VIC(Vingroup) | VHM(Vinhomes) |
|---|---|---|
| 性格 | 持株会社・複合 | 住宅開発専業 |
| HOSE上場年 | 2007年 | 2018年 |
| 事業範囲 | 多角化(不動産・自動車・リゾート他) | 住宅開発に集中 |
| 主要傘下企業 | VHM、VRE、VPL、VFS等 | (自社事業) |
| FOL状況 | 中位 | 満杯に近い |
VICの過半数保有
VICはVHMの過半数を保有しているため、VHMの業績はVIC連結業績の中核を構成します。VHMの利益はVIC連結利益に貢献しますが、両社は独立した上場企業として、それぞれ独自の株価・取引が行われています。
投資判断における2銘柄の差異
VICへの投資の特徴
- グループ全体への投資(複合)
- 不動産+自動車+リゾート+他の事業構成
- VinFastの損失も連結業績に影響
- 創業者依存リスク・関連当事者取引リスクが大きい
VHMへの投資の特徴
- 住宅開発事業に集中
- 不動産市場の循環性に直接連動
- VinFast関連リスクは連動度が低い(VICほどではない)
- FOL満杯による直接購入の制約
投資家の方針により、選択する銘柄が異なります。「Vingroup関連株」と一括りにせず、各銘柄の固有の構造を理解することが重要です。
4. 財務基盤と業績特徴
不動産業特有の財務構造
Vinhomesの財務には、不動産業特有の構造があります。日本の投資家にとって、特に押さえておきたい点を整理します。
収益認識タイミング
ベトナムの会計基準では、住宅の引き渡し時に売上計上されます。このため、大型プロジェクトの完成・引き渡しタイミングで業績が大きく変動する構造です。「契約済販売(Contracted Sales)」と「会計売上」の間にはタイムラグがあり、両指標を区別して理解することが重要です。
土地バンク(Land Bank)の規模
Vinhomesは、2024年12月末時点で約1.88億平方メートルの土地保有面積を持ち、ベトナム最大規模の土地バンクとされています。これは将来の事業基盤として重要な資産であり、長期的な開発計画の前提となります。
(出典:Vinhomes公式・Vietstock)
有利子負債の構造
不動産開発は資本集約的な事業であり、Vinhomesも連結ベースで大規模な有利子負債を抱えています。プロジェクトファイナンスの活用、社債発行、銀行借入等、複数の資金調達手段を組み合わせています。Fitchによる「BB-」格付け取得等、国際的な格付けも受けています。
(出典:Vinhomes統合報告書・Fitch Ratings)
販売戦略の特徴
Vinhomesの販売戦略は、不動産業界として特徴的です。
- 早期予約販売(Off-Plan Sales):着工前から販売開始
- 銀行ローン提携:住宅ローン金利の負担軽減策
- 富裕層向けマーケティング:ブランド体系による差別化
- 大型プロジェクトの段階的販売
財務データの解釈の注意
財務データは過去・現在の事実であり、将来の業績や株価動向を保証するものではありません。
不動産事業は循環性が強く、市場環境(金利・規制・需給)により業績が大きく変動する可能性があります。財務データを根拠とした断定的な将来予測は、本記事では行いません。
5. 外国人保有上限(FOL)の特殊性
Vinhomes(VHM)は、日本人投資家にとって、FOL(外国人保有上限)を理解することが特に重要な銘柄です。「Foreign Room満杯銘柄」として広く知られています。
FOLとは
FOLは、ベトナム株式市場における外国人投資家の保有上限を規定する制度です。業種・銘柄ごとに上限が設定されています。
- 一般銘柄:49%上限
- 銀行業:30%上限
- その他規制業種:業種により異なる
VHMの場合、49%の外国人保有上限が設定されており、現状この上限に近い水準で外国人保有が継続している状況です。
VHMがFOL満杯に近い背景
VHMがFOLの上限に近い保有比率を維持している背景には、海外機関投資家からの長期的な需要があります。GIC(Government of Singapore Private Ltd.)が約5.74%を保有していることは、その代表例です。
投資家への実務的影響
直接投資の場合
- 新規の外国人投資家による市場での直接購入は困難な期間がある
- 既存外国人保有者からの相対取引(Put-through transactions)が必要となる場合
- プレミアム価格での取引が発生する場合もある
ETF経由の投資
- VN30追跡ETFを通じた間接投資
- VanEck Vietnam ETF(VNM)等にもVHMは組入れられている
- FOL満杯の状況でもETF経由は可能
(投資方法の詳細は、別記事「日本からのベトナム株投資──直接投資・ETF・投資信託の3つの方法と実務の整理」をご参照ください)
FTSE新興国昇格との関係
2026年9月21日に発効するFTSE新興国市場昇格において、VHMはFTSE関連指数の対象銘柄として注目されています。ただし、FOL制約により、実際の組入れ比率や流入規模には制限が伴う可能性があります。
(出典:FTSE Russell・各種市場分析)
FOL満杯=投資推奨ではない
「FOLが満杯=人気銘柄=買うべき」という単純な解釈は、誤った認識です。
FOL満杯は、海外投資家からの過去の需要を反映した制度的事実であり、将来の株価動向や個別投資の妙味を意味するものではありません。FOLが満杯であっても、不動産市場の循環や企業固有のリスクにより、株価が大幅に変動する可能性は常にあります。
6. Vinhomesの構造的強み
Vinhomesが現在持つ構造的な強みを、3点に整理します。
強み1:ベトナム不動産市場での圧倒的シェア
住宅開発業界で確立された最大手の地位。年間販売規模(契約済販売)、開発プロジェクトの規模、市場での認知度のいずれも、ベトナム不動産業界の中で突出しています。ベトナム全国40都市以上での展開、約1.88億平方メートルの土地バンクは、構造的な事業基盤となっています。
(出典:Wikipedia “Vinhomes”・Vietstock)
強み2:「街づくり」コンセプトの差別化
単なる住宅販売ではなく、街区規模の複合都市開発を行う点が、Vinhomesの差別化要因です。学校、病院、商業施設、公園、スポーツ施設等を一体的に整備し、Vin-ブランドファミリー(Vinmec、Vinschool、Vincom等)を統合活用することで、中間層・富裕層向けのライフスタイル提供を実現しています。
強み3:政府関係・大型開発許可の優位性
大規模な土地取得能力、開発許可取得の実績、地方政府との関係構築等、ベトナム不動産業界における規制面での構造的な優位性を保有しています。これは新規参入企業にとって追随困難な参入障壁として機能しています。
強みも「保証」ではない
これらの構造的強みは、Vinhomesが現在持つ事実です。ただし、「強み = 将来の株価上昇の保証」ではありません。強みは「土台」であり、市場の動きは別個の要因(業績・需給・為替・政策・地政学・市場循環等)で決まります。
7. Vinhomesの構造的課題とリスク
第7記事(VIC・Vingroup)と同様、楽観論一辺倒は知的に不誠実です。プロのメディアの責務として、Vinhomesの構造的課題・リスクを誠実に整理します。
課題1:不動産市場の循環性
ベトナム不動産市場は、循環性が強い市場として知られています。2022-2023年には、金利上昇と規制強化を背景とした調整局面を経験しました。過去の市場動向を見ると、不動産バブル懸念や調整局面が複数回発生しており、Vinhomesの業績もこの市場循環の影響を受けます。
(出典:World Bank Vietnam Macro Reports・JLL Vietnam・CBRE Vietnam)
課題2:Land Law(土地法)改正の影響
2023年に新Land Lawが成立し、2024年から関連法令が順次施行されています。これにより、開発許可・土地取得プロセスに変化が生じており、不動産開発業者全体に法的不確実性をもたらしています。Vinhomesも、この制度変化への対応が継続課題となっています。
(出典:World Bank・PWC Vietnam・JLL Vietnam)
課題3:金利環境への感応性
不動産は金利感応的なセクターです。住宅ローン金利の変動は、購入者の購入意欲・購入可能額に直接影響し、Vinhomesの販売動向に影響します。State Bank of Vietnam(SBV)の金融政策、グローバル金利動向は、継続的に注視すべき要因です。
(出典:State Bank of Vietnam)
課題4:都市化進展速度への依存
Vinhomesの中長期的な成長は、ベトナムの都市化進展に依存しています。2024年時点の都市化率は約40%で、政府目標は2030年45%、2050年55%です。都市化進展速度の鈍化、中所得国の罠の影響等は、長期的な構造リスクとなります。
(出典:World Bank・GSO・ベトナム建設省)
課題5:大規模有利子負債とリファイナンス・リスク
不動産開発は資本集約的であり、Vinhomesも連結ベースで大規模な有利子負債を抱えています。金利環境変化、社債のリファイナンス、信用格付けの変動等、財務面の構造リスクが存在します。
(出典:Vinhomes統合報告書・Fitch Ratings)
課題6:VICグループ全体のリスク連動
VinhomesはVingroup(VIC)の傘下にあるため、VICグループ全体のリスクと連動する側面があります。VinFast関連の財務影響、創業者依存リスク、関連当事者取引リスク等、第7記事(VIC・Vingroup)で記述したVICグループ全体の課題は、間接的にVHMにも影響を与えうる構造です。
課題7:土地バンク(Land Bank)の評価リスク
約1.88億平方メートルの大規模Land Bankは強みである一方、市場価格変動による評価リスクも内包しています。開発許可取得の遅延、土地取得コストの変動、引き渡しタイミングのずれ等、土地バンクから売上への転換プロセスにおけるリスクも存在します。
課題8:住宅市場の構造変化
ベトナムの中間層拡大に伴い、住宅ニーズも多様化しています。賃貸市場の拡大、共同住宅(コンドミニアム)以外の需要、高級住宅市場での競争激化、ESG指向の住宅選好等、市場構造の変化への適応が継続課題となります。
(出典:McKinsey Vietnam・JLL・CBRE)
8. 日本人投資家の構造理解・5つのポイント
ポイント1:VICとVHMの根本的な違いを再確認
VIC = 持株会社・複合(自動車事業の影響大)
VHM = 住宅開発専業(不動産循環の影響大)
異なる事業特性・リスク特性を持っており、同じ「Vingroup関連」として一括りにできるものではありません。それぞれ独自の投資判断が必要となります。
ポイント2:FOL満杯銘柄としての特殊性
VHMはFOL満杯に近い銘柄として知られます。直接投資が困難な期間があり、ETF経由の選択肢を検討するケースも多くあります。FOL満杯は「人気銘柄」を意味するものではあっても、「投資推奨」を意味するものではありません。
(詳細は別記事「ベトナム株式市場の基礎知識」「日本からのベトナム株投資」を参照)
ポイント3:ベトナム不動産市場の循環性理解
ベトナム不動産市場は、循環性が強い市場です。過去にも調整局面を経験(2022-2023年)しており、構造的成長と短期的循環の区別が重要です。Vinhomesの株価も、市場循環の影響を受ける構造にあります。
ポイント4:FTSE新興国昇格との関係
VHMはFTSE関連指数の対象銘柄として注目されています。ただし、FOL制約により実際の組入れには制限が伴う可能性があります。「FTSE組入れ = 株価上昇」という単純な構造では、市場は動きません。
(詳細は別記事「ベトナム株式市場、FTSE新興国市場昇格が確定」を参照)
ポイント5:★最重要──構造理解と投資判断は別個
本記事の中で、最も強調しておきたいのが、この第5ポイントです。
本記事はVHM・Vinhomesの企業構造を客観的に解説したものです。構造的特徴の理解は、投資推奨ではありません。
VHMへの投資判断は、以下を総合的に検討する別個のプロセスとなります。
- 投資家ご自身の投資方針・リスク許容度
- ポートフォリオ全体の構成
- VND/JPYの為替リスク
- 不動産市場の循環性
- FOL制約の実務的影響
- VICグループ全体のリスク連動
- Land Law改正等の制度リスク
- 金利環境の動向
- 各種地政学的・経済的リスク
「企業構造の理解」と「投資判断」は明確に区別してください。本記事は前者を提供することを目的としており、後者を推奨するものではありません。
9. 編集員リンの観察
私は、ハノイで生まれ育つ過程で、Vinhomesの大型住宅団地が次々と建設されていく様子を、肌で感じてきました。
幼少期、Times Cityがハノイ郊外に建設されていく光景。中学・高校時代、Royal Cityの大型ショッピングモールが街の風景を変えていく様子。大学時代、Ocean Cityがハノイ東部に巨大な街区として現れる衝撃──こうした景観の変化が、Vinhomesという企業の成長そのものでした。
証券会社で働いていた頃、お客様から「VHMは買いですか?」というご相談をよく受けました。FOLが満杯に近いことを説明すると、「では買えないんですね」と驚かれていたことを覚えています。FOL制度は、海外投資家とベトナム市場の現実を象徴する仕組みの一つです。
VHMは、ベトナムの都市化進展を象徴する企業の一つです。同時に、不動産市場の循環性、Land Law改正、金利環境、VICグループとの連動性、土地バンクの評価リスク等、構造的な課題も抱えています。
街の風景が変わっていく実感と、企業の財務構造の冷静な分析。この両方を見ることが、Vinhomesという企業を理解する上で大切だと、── 私はそう思います。
第7記事のVIC・Vingroupでも触れた「光と影」は、VHMにも当てはまります。輝く側面と、難しい側面の両方を、ハノイで生まれ育った一人として、皆様にお届けしたいと考えています。
── リン
10. まとめ
本記事では、ベトナム最大の住宅開発業者、VHM・Vinhomesの企業構造を整理してきました。
ポイントを整理すると、以下の通りです。
- VHM・Vinhomesはベトナム最大の住宅開発業者(2018年5月17日HOSE上場)
- VIC(Vingroup)傘下の独立した上場子会社
- 主要事業:大型住宅団地開発(Royal City、Times City、Ocean Park、Grand Park等)
- 商品ブランド体系:Sapphire(中所得層)、Ruby(高所得層)、Diamond(超富裕層)
- 土地保有面積:約1.88億平方メートル(ベトナム最大規模)
- FOL満杯銘柄として知られ、直接投資には制約
- 構造的強み:不動産シェア、街づくりコンセプト、政府関係
- 構造的課題:市場循環性、Land Law改正、金利環境、VICグループ連動、有利子負債、土地バンク評価リスク等
- VICとVHMは別物・構造理解 ≠ 投資推奨
そして、最も重要な認識として、企業構造の理解と投資判断は別個のプロセスであり、構造的特徴の存在は将来の株価動向を保証するものではありません。
不動産市場の循環性、Land Law改正、FOL制約、VICグループ全体のリスク連動等、誠実に認識すべきリスク要因が多く存在します。投資判断は、これらのリスク要因を含めた総合的な検討が必要となります。
次回は、ベトナム最大の銀行Vietcombank(VCB)の構造を、より詳しく解説する予定です。
関連記事──ベトナム資産形成研究所の連載
本記事は、ベトナム資産形成研究所による「個別企業構造分析シリーズ」の第2弾です。基礎ガイド5記事連載・マクロ展望の柱記事・第7記事(VIC)と併せてお読みいただくことで、ベトナム株式市場をより体系的に理解いただけます。
- 第1記事「ベトナム株式市場、FTSE新興国市場昇格が確定──2026年9月21日発効・60億ドル流入予測」(2026年5月8日公開)
- 第2記事「VN-Index、史上最高値を3日連続更新──5月8日1,915.37pt到達」(2026年5月9日公開)
- 第3記事「ベトナム株式市場の基礎知識──HOSE・HNX・UPCoMの違いと投資の入口」(2026年5月10日公開)
- 第4記事「日本からのベトナム株投資──直接投資・ETF・投資信託の3つの方法と実務の整理」(2026年5月12日公開)
- 第5記事「ベトナム株の代表指数を読み解く──VN-Index・VN30・HNX-Index・UPCoM-Indexの構造と意味」(2026年5月14日公開)
- 第6記事「ベトナム経済の構造的成長を読み解く──人口動態・製造業ハブ化・ASEAN中核国としての立ち位置」(2026年5月17日公開)
- 第7記事「VIC・Vingroupの構造を読み解く──ベトナム最大の複合コングロマリットの全体像」(2026年5月20日公開)
ベトナム資産形成研究所・メンバーシップ(近日開始予定)
5階層ファクトチェックモデルで、ベトナム株式市場の本質をお届けする「ベトナム資産形成研究所」。
メンバー限定コンテンツとして、以下を準備中です。
- FTSE発効関連の継続レポート
- 5階層FC適用済の銘柄分析(月10〜20本)
- ベトナム語決算資料の即時翻訳
- 編集員リンの取材日誌・市況メモ
メンバーシップの詳細は、まもなくお知らせいたします。
無料公開コンテンツとして、noteでは引き続き、ベトナム株式市場の市況解説、企業発表事項の整理を、ハノイからお届けしてまいります。
note公式アカウント:note.com/vn_kabu_sokuho
※本記事は、VHM・Vinhomes(Vinhomes JSC)の企業構造に関する情報提供を目的とした事実報道です。
特定の銘柄の売買を推奨するものではなく、投資助言業として行われるものでもありません。
本文中の財務データ・企業情報は、Vinhomes公式IR、HOSE開示、VIC統合報告書、各種公的データに基づいています。最新値は、各情報源の公式情報をご確認ください。
本記事で解説する企業構造は、執筆時点でのVinhomesの構造に関する観察であり、将来の業績や株価動向を予測または保証するものではありません。企業構造の理解と投資判断は別個のプロセスであり、構造的特徴の存在が株価上昇を保証するものではありません。
Vinhomesの事業は、ベトナム不動産市場の循環性、Land Law改正等の制度変化、金利環境、有利子負債、VICグループ全体のリスク連動、外国人保有上限(FOL)制約、土地バンク評価リスク等、複数の構造的課題を含みます。投資判断にあたっては、これらのリスクを総合的にご検討ください。
本記事の内容は、過去・現在の企業データの観察であり、将来の動向を予測または保証するものではありません。情報の正確性には万全を期していますが、その内容を保証するものではありません。
投資判断の最終的な決定は、読者ご自身の責任において行ってください。
ベトナム株式投資は価格変動が大きく、為替変動を含めて元本割れのリスクを伴います。
──ベトナム資産形成研究所・編集部
(執筆:リン)
2026年5月23日

コメント