ベトナム株式市場への投資を検討される際、最初に直面する疑問は「どのような方法で投資できるのか」というものです。
実は、日本の個人投資家がベトナム株式市場にアクセスする方法は、大きく3つに分かれます。直接投資(ベトナム現地証券会社の口座)、ETF(海外籍ETF経由)、そして国内の投資信託です。
それぞれに特徴があり、必要な手続きやコスト、為替リスクの扱いが異なります。本記事では、3つの方法の違いと、日本人投資家としての実務的な留意点を整理してお届けします。
なお、本記事は事実報道です。特定の証券会社や金融商品の推奨ではありません。
1. 直接投資──ベトナム現地証券会社の口座開設
直接投資の概要
直接投資とは、ベトナムの現地証券会社で口座を開設し、ベトナムドン(VND)建てで個別銘柄を取引する方法です。HOSE・HNX・UPCoMの3市場の全銘柄が対象となり、最も自由度の高い投資方法と位置づけられています。
ただし、後述する通り、日本の個人投資家にとっては言語・実務面での負担が大きい方法でもあります。
口座開設の実務
ベトナム現地証券会社での口座開設には、以下のような手続きが必要となります。
- パスポート、ビザ等の本人確認書類
- ベトナム税務番号(MST・Mã số thuế)の取得
- VND建ての証券口座の開設
- 原則としてベトナム現地での手続き(オンライン化が一部進行中)
具体的な必要書類や手続きの最新情報は、各証券会社の公式情報をご確認ください。
主要なベトナム現地証券会社(事実列挙)
ベトナムには多数の証券会社が存在しますが、外国人投資家対応のある主要証券会社として、以下が挙げられます。
- SSI Securities(Saigon Securities Inc.)
- VCSC(Viet Capital Securities)
- HSC(Ho Chi Minh City Securities Corporation)
- VNDirect Securities
- MBS(MB Securities)
- VPS Securities
各証券会社の手数料体系、外国人投資家サポートの内容、英語対応の有無等は、各社の公式情報をご参照ください。
メリット
直接投資の主な特徴として、以下が挙げられます。
- 3市場の全銘柄にアクセス可能
- リアルタイムでの取引
- 配当金・株主優待を直接受領
- 個別銘柄の選定における自由度の高さ
デメリット・留意点
一方で、以下のような負担も存在します。
- 言語の壁(英語またはベトナム語が必要)
- ベトナム現地での口座開設手続き
- 税務処理の複雑さ(日越租税条約の適用等)
- 日本語での情報入手の困難さ
- 緊急時の対応における時差・言語の壁
- 外国人保有上限(FOL)が満杯の銘柄は購入困難
(出典:各証券会社公式・State Securities Commission)
2. 海外籍ETF経由の投資
海外籍ETFの概要
海外籍ETFとは、米国等の海外市場に上場するベトナム関連の上場投資信託(ETF)を経由して、ベトナム株のバスケットに分散投資する方法です。
取引通貨は主に米ドル(USD)で、米国市場で取引されているため、日本の主要ネット証券会社で取扱いがある場合が多くなっています。
主要な海外籍ベトナムETF(事実列挙)
2026年5月時点で、ベトナム株式に投資する代表的な海外籍ETFとして、以下が知られています。
- VanEck Vietnam ETF(VNM・NYSE上場・2009年8月設定)
- Global X MSCI Vietnam ETF(VNAM)
このうち、VanEck Vietnam ETFは2009年に設定され、純資産額・取引高ともにベトナム単独国ETFの中で最大規模とされています。追跡指数はMarketVector Vietnam Local Indexです。
(出典:VanEck公式・Investing.com・ETFTrends.com)
なお、過去にはiShares MSCI Frontier and Select EM ETF(FM)もベトナム株への投資ルートとして知られていましたが、運用会社のBlackRockは2024年に同ETFの清算終了を発表し、最終取引日は2025年1月となりました。現時点では取引できない点にご留意ください。
(出典:ETFTrends.com・Advisor Perspectives)
また、FTSE新興国指数を追跡するETF(例:Vanguard FTSE Emerging Markets ETF・VWO等)については、2026年9月のベトナム新興国市場昇格に伴い、ベトナム関連銘柄の組入れが進行する見通しです。
海外籍ETF経由のメリット
- 分散投資が容易(個別銘柄選定不要)
- 米国市場で取引可能
- 米ドル建てで為替管理
- 流動性が比較的高い
- FOL(外国人保有上限)を意識せず投資可能
デメリット・留意点
- 個別銘柄選定の自由度なし
- ETF構成銘柄の偏り(指数構成依存)
- 米国経由の取引コスト
- USD/JPYとUSD/VNDの二重為替の影響
- 運用会社の方針変更・清算リスク(過去のFM清算事例)
国内証券会社での取扱い
日本国内の主要なネット証券会社では、米国上場のETFの取扱いがあります。ベトナムETFの取扱いの有無、最新の取引コスト等は、各証券会社の公式情報をご確認ください。取扱いETFのラインナップは時期により変動することがあります。
3. 投資信託経由の投資
日本国内のベトナム関連投資信託の概要
日本の運用会社が組成・運用するベトナム関連の投資信託も、ベトナム株式市場への投資ルートの一つです。日本円(JPY)建てで購入でき、国内の証券会社・銀行等で取扱いがあります。
投資信託の特徴
ベトナム関連の投資信託には、運用方針により以下のようなタイプが存在します。
- アクティブ運用ファンド(運用会社が個別銘柄を選定)
- パッシブ運用ファンド(指数連動型)
- ベトナム株単独ファンド
- 新興国・フロンティア株式ファンド(ベトナム比率を含む)
具体的なファンドのラインナップ、運用方針、信託報酬等は、各運用会社の目論見書および運用報告書をご確認ください。
メリット
- 日本円建てで購入可能
- 国内証券会社で取扱い
- 少額から分散投資が可能
- 税務処理が比較的シンプル
- NISA(少額投資非課税制度)の活用が可能なケース
- FOLを意識せず投資可能
デメリット・留意点
- 信託報酬等のコストが継続的に発生
- 個別銘柄選定の自由度なし
- 運用会社の方針依存
- 流動性は基準価額ベース(1日1回)
- 運用パフォーマンスはファンドにより異なる
(出典:各運用会社の目論見書・運用報告書)
4. 3つの方法の比較表
ここまでの内容を、表形式で整理します。
| 項目 | 直接投資 | 海外籍ETF | 投資信託 |
|---|---|---|---|
| 取引通貨 | VND | USD | JPY |
| 口座開設 | ベトナム現地 | 国内ネット証券 | 国内証券会社 |
| 銘柄選定 | 個別銘柄可 | バスケット(指数連動) | バスケット(運用会社依存) |
| 為替リスク | VND/JPY | USD/JPY+USD/VND | ファンド内処理 |
| 主なコスト | 取引手数料 | 売買手数料+経費率 | 信託報酬 |
| 流動性 | 銘柄により大差 | 米国市場連動 | 基準価額ベース |
| 税務処理 | 複雑 | 標準的 | シンプル |
| NISA活用 | 不可 | 一部可能性あり | 多くで可能性あり |
| FOL影響 | あり | なし | なし |
(出典:各証券会社・運用会社公式情報)
表からも分かる通り、3つの方法はそれぞれ異なる特徴を持っており、画一的な「最適解」は存在しません。投資家ご自身の方針、リスク許容度、ベトナム市場との関わり方によって、適合する選択肢が異なります。
5. 日本人投資家の実務留意点・5項目
留意点1:為替リスクの理解
3つの方法では、為替リスクの構造が大きく異なります。
- 直接投資:VND/JPYの変動が直接影響
- 海外ETF:USD/JPY(投資家側)とUSD/VND(ETF側)の二重為替
- 投資信託:ファンド内で為替処理(ヘッジの有無は商品により異なる)
VNDは管理変動相場制で、緩やかな下落傾向にあります。日本円ベースのリターンを考える場合、為替変動は無視できない要因です。
留意点2:税務処理の複雑さ
ベトナム株式投資の税務処理は、選択する方法により大きく異なります。
- ベトナム源泉徴収の有無(直接投資の場合は適用)
- 日越租税条約の適用(二重課税回避)
- 日本国内での確定申告義務
- NISA等の非課税制度の活用可能性
税務処理の詳細は、税理士または現地税務専門家にご相談されることをお勧めします。複雑な国際税務の判断には、専門家のサポートが不可欠です。
留意点3:情報入手の限界
ベトナム株式市場に関する日本語情報は、他の主要市場(米国・日本・中国等)と比べて限定的です。投資前の情報収集には、英語またはベトナム語での情報源、信頼できる専門メディアの活用が必要となります。
留意点4:FOL(外国人保有上限)の影響
直接投資の場合、外国人保有上限(FOL)が満杯の銘柄は購入できません。例えば、MWG(Mobile World)等は、外国人保有上限が満杯の状態が続いていることが知られています。
一方、海外ETFや投資信託経由の場合、FOLを意識せずにベトナム株市場全体への投資が可能です。これは、特定の人気銘柄に投資したい場合の重要な構造的差異です。
(出典:State Securities Commission・各社公式IR)
留意点5:取引時間と流動性の違い
- ベトナム市場の取引時間:現地時間9:00-15:00(日本時間11:00-17:00)
- 海外ETF:米国市場時間(日本時間夜)
- 投資信託:基準価額(1日1回算出)
取引のタイミングや約定方法は、各方法で大きく異なります。短期売買を志向する方と、長期保有を志向する方では、適合する方法が変わってきます。
6. 投資家タイプ別の選択肢の整理
3つの方法のうち、どの方法が「最適」かは、投資家ご自身の方針によります。本セクションでは、各方法が想定する投資家像を整理します。
ただし、これは「○○の投資家には○○がおすすめ」ではなく、「○○の特徴を持つ方法は、○○の方針の方の検討対象になり得る」という客観的整理です。
個別銘柄の選定を重視する方
個別銘柄を選定し、長期的にベトナム市場にコミットしたい方は、直接投資の特徴と適合する可能性があります。ただし、言語・実務面での負担、税務処理の複雑さを許容できることが前提となります。
分散投資を重視する方
個別銘柄選定の負担なく、ベトナム株市場全体に分散投資したい方は、海外ETFの特徴と適合する可能性があります。ただし、ETFの構成銘柄や運用方針は指数連動であり、個別銘柄選定の自由度はありません。
日本円建てで完結したい方
日本円建てで完結し、税務処理をシンプルに抑えたい方は、投資信託の特徴と適合する可能性があります。NISA等の非課税制度を活用できるケースもあります。
複数方式の併用も検討対象
3つの方法は排他的ではなく、併用も検討対象となります。例えば、投資信託で基盤を作り、海外ETFで分散性を高め、ある程度ベトナム市場への理解が深まった段階で、特定の銘柄について直接投資を検討する、というアプローチも選択肢の一つです。
投資金額、リスク許容度、ベトナム市場への関わり方の深さに応じて、ご自身に合った組み合わせをご検討ください。
7. 編集員リンの観察
私が証券会社で働いていた頃、日本人のお客様から「どうやってベトナム株を買えばいいですか」というご相談をよくお受けしました。
その時、私はいつも「投資の方法には3つの選択肢があります」とお答えしていました。直接投資、海外ETF、投資信託──それぞれに合う投資方針があり、画一的な正解はありません。
大切なのは、ご自身の投資金額、リスク許容度、為替への向き合い方、そしてベトナム市場とどの程度深く関わりたいか、を整理することだと、── 私はそう思います。
2018年に大学2年生だった私が、いまベトナム株速報社の編集員として、日本の個人投資家の方々がベトナム市場をご検討される、その瞬間に立ち会っています。本記事が、ベトナム株式市場への投資を検討される方にとって、3つの選択肢を整理する一助となれば幸いです。
明日以降の動向についても、引き続き事実に基づいた観察をお届けします。
── リン
8. まとめ
本記事では、日本からのベトナム株投資の3つの方法(直接投資・海外ETF・投資信託)を、日本の個人投資家の方向けに整理してきました。
ポイントを整理すると、以下の通りです。
- 直接投資:全銘柄アクセス可能だが、言語・実務の負担大
- 海外ETF:分散投資が容易、二重為替の留意必要、過去にFM清算事例あり
- 投資信託:日本円建てで完結、信託報酬の継続発生、NISA活用可能性
- 3つの方法はそれぞれ特徴があり、画一的な「最適解」は存在しない
- 投資家の方針・リスク許容度・市場への関わり方の深さに応じて選択
3つの方法を理解することは、ベトナム株式投資の重要な第一歩です。次回は、ベトナム株式市場の代表的な指数(VN-Index・VN30など)について、より詳しく解説する予定です。
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ベトナム株式市場の構造、史上最高値、FTSE新興国昇格について、詳しくは以下の記事もご参照ください。
- 「ベトナム株式市場の基礎知識──HOSE・HNX・UPCoMの違いと投資の入口」(2026年5月10日公開)
- 「VN-Index、史上最高値を3日連続更新──5月8日1,915.37pt到達」(2026年5月9日公開)
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※本記事は、ベトナム株式市場への投資方法に関する情報提供を目的とした事実報道です。
特定の証券会社、ETF、投資信託の推奨ではなく、投資助言業として行われるものでもありません。
本文中の証券会社名・金融商品名の言及は、3つの投資方法の構造を解説する目的での事実報道であり、特定の選択を推奨するものではありません。
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──ベトナム株速報社・編集部
(執筆:リン)
2026年5月10日

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