ベトナム株配当の税金構造を読み解く──二重課税・外国税額控除・日本人投資家への影響を、ハノイから整理

こんにちは、ベトナム資産形成研究所のリンです。

ハノイから今日もベトナム株式市場の話をお届けします。

「ベトナム株は配当利回りが高いと聞きました。でも、税金はどうなるのでしょうか?」「VND建ての配当を日本円で受け取る時、何回も税金が引かれるって本当ですか?」──私のところには、日本人投資家の方から、こうしたご相談が定期的に届きます。

ベトナム株の配当税金は、日本株と比べて構造的に複雑です。ベトナム側での源泉徴収、為替交換、日本側での所得税課税、外国税額控除──これらが重層的に絡み合います。「配当利回り5%だから魅力的」と表面の数字だけを見ていると、実際の手取り額に大きな差が生じることがあります。

本記事では、ベトナム株配当の税金構造を、現地ハノイから整理してお届けします。

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これが、ハノイから皆様にお届けする編集姿勢です。本記事は、配当税金の構造を「光と影」の両面から、客観的に整理することを目的としています。

なお、本記事は事実報道です。特定の銘柄の売買を推奨するものではなく、配当税金の構造を客観的に解説するものです。税制は変更される可能性があり、また個別の税務判断は税理士等の専門家へのご相談が必要です。本記事は、税務助言ではなく、構造理解のための情報提供を目的としています。

目次

1. そもそも、ベトナム株の配当はどう支払われるのか?

ベトナム企業の配当政策の基本

ベトナム上場企業の配当は、ベトナム会計基準に基づき、ベトナム企業がベトナムドン(VND)建てで支払うのが原則です。配当額は、額面1株あたりの○%という形で表現されることが一般的です。

たとえば、額面1,000VND・配当30%の場合、1株あたり300VND/年の配当となります。配当利回りは、年間配当額を株価で割って算出されます。

  • 支払通貨:VND建て(原則)
  • 支払時期:中間配当・期末配当・特別配当(企業による)
  • 支払方法:証券口座への振込
  • 配当宣言から支払までの期間:通常1〜3ヶ月程度

日本の証券会社経由で受け取る場合

日本人投資家がベトナム株を日本の証券会社経由で保有している場合、VND建て配当が、各証券会社のシステムを経由して、日本円(JPY)または米ドル(USD)に変換されて入金されます。

この変換プロセスで、★為替手数料★が発生します。これは、税金とは別のコスト要因です。

2. ベトナム源泉徴収はどう機能するのか?

ベトナム源泉徴収の基本構造

ベトナム上場企業が配当を支払う際、ベトナム側で★源泉徴収★が行われます。これは、ベトナム国内法に基づく税金で、配当受取人がベトナム居住者であるか非居住者(外国人投資家)であるかによって税率が異なる場合があります。

  • 源泉徴収税率:配当に対して一定率(2026年5月時点で5%が一般的・最新は税理士・公的情報源で確認)
  • 適用範囲:ベトナム上場企業からの配当・関連配当所得
  • 徴収の仕組み:配当支払時に企業が源泉徴収し、ベトナム税務当局に納付

(出典:ベトナム税法・2026年5月時点。最新情報は税理士・公的情報源でご確認ください)

源泉徴収後の受取金額

たとえば、配当総額10,000VNDの場合、源泉徴収税率5%なら、500VNDが源泉徴収され、9,500VNDが投資家に支払われます。この9,500VNDが、為替交換を経て、日本円で証券口座に入金されます。

租税条約の影響

日本とベトナムは★租税条約★を締結しています。租税条約は、二重課税の調整、源泉徴収税率の上限、外国税額控除の対象範囲等を定めるものです。

租税条約により、配当の源泉徴収税率の上限が定められている場合があります(具体的な税率は条約の改定・各時点で確認が必要)。租税条約の適用を受けるためには、所定の手続き(居住者証明書の提出等)が必要な場合があります。詳細は、税理士・各証券会社・公的情報源でご確認ください。

3. 日本での確定申告はどう行うのか?

日本での課税の基本

日本居住者(日本に住んでいる方)がベトナム株の配当を受け取った場合、その配当は★日本の所得税の対象★となります。これは、日本の課税原則「居住者は全世界所得が課税対象」に基づくものです。

つまり、ベトナム側で源泉徴収された5%の税金を引かれた後の配当が、日本側でも所得として課税対象となります。これが、構造的な「二重課税」状態の原因です。

日本側の課税方式

日本側では、ベトナム株配当を含む外国株配当について、以下のいずれかの方式で課税されます。

  • 申告分離課税:配当所得を他の所得と分離して、一律20.315%(所得税15.315%+住民税5%)で課税
  • 総合課税:他の所得と合算して累進税率で課税
  • 申告不要制度:特定口座(源泉徴収あり)等での処理

(出典:日本の所得税法・2026年5月時点。最新情報は税務署・税理士でご確認ください)

外国株配当の特定口座対応

日本の主要証券会社では、外国株配当の特定口座対応が進んでいます。SBI証券、楽天証券、マネックス証券、アイザワ証券等で、特定口座(源泉徴収あり)を利用すれば、確定申告の手間が簡素化されます。

ただし、ベトナム個別株の特定口座対応の範囲は、各証券会社の方針により異なります。投資信託・ETF経由(楽天証券・マネックス証券・SBI証券のベトナム関連商品)では、特定口座対応が標準的です。詳細は、連載別記事「日本からベトナム株を買える証券会社4社徹底比較」もご参考ください。

4. 外国税額控除はどう機能するのか?

二重課税を緩和する制度

ベトナム側で源泉徴収された税金と、日本側で課税される所得税が、構造的に二重課税状態を生み出します。これを緩和するのが★外国税額控除★(Foreign Tax Credit)制度です。

外国税額控除は、日本の確定申告において、ベトナム側で納付した税金を、日本側の所得税から一定範囲で控除できる仕組みです。

外国税額控除の計算式

外国税額控除には控除限度額があり、その計算式は以下のとおりです(概要)。

  • 控除限度額:日本の所得税額 × (国外所得金額 ÷ 全世界所得金額)
  • 控除対象:ベトナムで実際に納付した源泉徴収税
  • 控除方式:確定申告にて適用

(出典:日本の所得税法・2026年5月時点。実際の計算は税理士にご相談ください)

外国税額控除の手続き

外国税額控除を受けるためには、以下が必要です。

  • 確定申告書の作成・提出
  • 外国税額控除関連書類(支払調書等)の準備
  • ベトナム側で源泉徴収された証明書類(各証券会社が発行)
  • 必要に応じて居住者証明書の取得

外国税額控除の現実的限界

外国税額控除は、二重課税を「完全に解消」するものではなく、「一定範囲で緩和」する制度です。実際の控除額は、各投資家の所得構造・他の所得との関係・控除限度額の制約等により異なります。

特に、配当所得のみで他の所得が少ない場合、外国税額控除の限度額が小さくなることがあり、ベトナム側で納付した源泉徴収税の一部が控除されない可能性があります。

5. 為替手数料はどう影響するのか?

配当受取時の為替交換

VND建て配当を日本円で受け取る際、為替交換が発生します。これは、税金とは別のコスト要因です。

  • VND-JPY直接交換:一部の証券会社で対応
  • VND-USD-JPY経由交換:多くの証券会社で標準的
  • 為替スプレッド:VNDは流動性の低い通貨のため、スプレッドが広くなりやすい

為替手数料の累積影響は、長期投資家にとって特に重要です。配当のたびに為替手数料が発生し続けるため、10年・20年単位の長期保有では、配当受取総額への影響が無視できなくなります。

為替変動リスクとの組み合わせ

VND-JPYの為替レートは変動します。配当が支払われた時点のレートと、実際に日本円で受け取った時点のレートとの差が、為替差益または為替差損として発生します。

つまり、配当の実質的なリターンは、以下の要素の合計です。

  • ベトナム企業の配当宣言額(VND建て)
  • マイナス:ベトナム側源泉徴収税
  • マイナス:為替手数料
  • プラス・マイナス:為替変動
  • マイナス:日本側所得税(外国税額控除後)

これらすべてを総合して、「実質的な配当の手取り額」が決定されます。

6. 高配当銘柄の「実質利回り」はどう計算するのか?

表面利回りと実質利回りの違い

ベトナム株式市場には、配当利回り5%超の高配当銘柄が複数存在します。VNM(Vinamilk)、PNJ(Phu Nhuan Jewelry)、GAS(PV Gas)等、配当政策の安定した銘柄は、日本人投資家にも人気です。

しかし、配当利回り5%という「表面の数字」と、実際に投資家の手元に届く「実質利回り」には、構造的な差があります。

実質利回り計算の例

仮定:配当利回り5.00%(表面)・銘柄A

  • ベトナム側源泉徴収(5%相当):配当の5%減
  • 為替手数料(両替・配当受取時):0.3〜0.5%程度の影響
  • 日本側所得税(20.315%):配当の20.315%減(外国税額控除前)
  • 外国税額控除による戻し:一定割合(各投資家の状況による)

これらをすべて考慮すると、実質的な手取り利回りは、表面利回りの70〜85%程度になることが一般的です(個別の状況により異なる)。

つまり、表面利回り5%の銘柄でも、実質手取り利回りは3.5〜4.25%程度になることが、構造的に想定されます。

長期投資家への構造的影響

長期保有の場合、毎年の配当受取で為替手数料・税金が累積します。10年保有・年間配当5%という想定でも、累積コストを考慮すると、実質的な収益は表面の数字より低くなる可能性があります。

このため、長期投資家は、配当利回りの「表面の数字」だけでなく、★「構造的なコスト要因」を含めた実質的な収益性★を見極める必要があります。

7. 日本人投資家の構造理解・5つのポイント

ポイント1:配当利回りは「表面の数字」

ベトナム株の配当利回り5%、10%といった数字は、構造的に「表面の数字」です。実質的な手取り額は、ベトナム源泉徴収・為替手数料・日本側所得税の累積影響を経て、表面の70〜85%程度になることが想定されます。

ポイント2:外国税額控除は「全額還付」ではない

外国税額控除は、二重課税を緩和する制度ですが、ベトナム側で納付した税金を全額還付するものではありません。各投資家の所得構造・他の所得との関係・控除限度額の制約等により、実際の控除額は異なります。

ポイント3:為替手数料は構造的な累積コスト

VND-JPY間の為替手数料は、配当受取の度に発生します。長期保有では、この累積影響が想定以上に大きくなることがあります。証券会社によって為替スプレッドが異なるため、長期投資家は証券会社選びの段階で為替手数料を比較検討することが重要です。

ポイント4:特定口座対応の活用

外国株配当の特定口座対応が進んでいる証券会社では、確定申告の手間が大幅に軽減されます。特に、投資信託・ETF経由(楽天証券・マネックス証券・SBI証券のベトナム関連商品)では、特定口座対応が標準的です。個別株の特定口座対応の範囲は、各証券会社で確認が必要です。

ポイント5:税務判断は専門家へ

本記事の内容は、構造理解のための情報提供を目的としています。実際の税務判断・確定申告の作成・外国税額控除の計算等は、税理士・税務署・公的情報源での確認が必要です。特に、複数の外国株を保有している場合、複雑な税務判断が必要となります。

8. 配当の「光と影」を見極める構造的視点

光(プラス面)

  • ベトナム株の配当利回りは構造的に高い銘柄が存在(高配当政策の企業多い)
  • 外国税額控除制度により、二重課税は一定範囲で緩和される
  • 長期保有では配当の積み上げ効果が期待できる
  • VND建て配当は、ベトナム経済成長と為替変動の両方の恩恵を受ける可能性

影(マイナス面)

  • ベトナム源泉徴収+日本所得税の構造的二重課税
  • 外国税額控除は全額還付ではない
  • 為替手数料の累積影響(VND流動性低・スプレッド広い)
  • 為替変動リスク(VND-JPY)
  • 確定申告の手間(特定口座対応外の場合)
  • 個別株の配当政策変動(業績悪化時の減配リスク)

これらを総合的に理解することで、ベトナム株配当の「実質的な価値」が見えてきます。

9. 編集員リンの観察

ハノイで生まれ育ち、ベトナム証券業界で3年間働いた経験から、配当税金についてお話しします。

ベトナムで証券会社の窓口に立っていた頃、外国人投資家(日本・韓国・シンガポール・米国等の方々)から、配当の税金についてのご質問を、何度も受けました。「私の国でも税金がかかるけれど、ベトナムでも引かれるのですか?」「為替手数料は、どれくらい影響するのですか?」──。

こうしたご質問への私の答えは、いつも同じでした。「配当利回りの『表面の数字』は、ベトナム経済の魅力を示しますが、実質的な手取り額は、税金・為替の累積影響を考慮する必要があります」。

ベトナム株式市場には、確かに配当政策の安定した魅力的な銘柄が多くあります。VNM、PNJ、GAS、REE、SAB、VEAM等、配当利回り5%超の銘柄は珍しくありません。日本株市場の平均利回りと比較しても、構造的に高い水準です。

しかし、「配当利回り5%だから魅力的」と表面の数字だけで判断すると、実際の手取り額との差に驚くことがあります。私が日本人投資家の方からよく相談を受けるのは、「配当を受け取ったら、思ったより少なかった」というご感想です。

配当を読むということは、数字の裏側を読むということです。源泉徴収、為替手数料、所得税、外国税額控除──これらの構造的論点を総合的に理解することが、長期投資家としての姿勢だと、── 私はそう思います。

派手な売買推奨はしません。私たちの仕事は、こうした構造的論点を「光と影」の両面から、誠実にお届けすることです。

配当の魅力に惹かれてベトナム株への投資をご検討されている皆様、ぜひ、構造的なコスト要因も含めて、ご自身の投資目的に照らして、慎重にご判断いただければと思います。

10. まとめ

本記事では、ベトナム株配当の税金構造を、ハノイから整理してきました。

ポイントを整理すると、以下のとおりです。

  • ベトナム株の配当はVND建てで支払われる
  • ベトナム側源泉徴収(5%相当・2026年5月時点)が発生
  • 日本側でも所得税の対象(申告分離課税・総合課税・特定口座等)
  • 外国税額控除制度で二重課税が一定範囲で緩和される
  • 為替手数料(VND-JPY)が累積コスト要因
  • 表面利回り5%の場合、実質手取り利回りは3.5〜4.25%程度が一般的
  • 租税条約・特定口座対応の活用が重要
  • 税務判断は税理士・税務署・公的情報源で確認

そして、最も大切な認識として、配当利回りは「表面の数字」であり、実質的な手取り額は構造的なコスト要因を経て決定されるということです。これを理解することで、長期投資家としてのより冷静な判断が可能になります。

本記事の内容は、2026年5月時点の税制・市場情報に基づきます。税制は変更される可能性があり、また個別の税務判断は税理士等の専門家へのご相談が必要です。最新情報は、税理士・税務署・各証券会社・公的情報源でご確認ください。

投資判断は、ご自身の投資方針・リスク許容度等を総合的に検討して、ご自身の責任において行ってください。

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関連記事──ベトナム資産形成研究所の連載

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──ベトナム資産形成研究所・編集部
(執筆:リン)
2026年5月17日

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