ベトナム株の代表指数を読み解く──VN-Index・VN30・HNX-Index・UPCoM-Indexの構造と意味

ベトナム株式市場の動向を伝えるニュースで、最も頻繁に登場する言葉は「VN-Index」です。

しかし、VN-Indexとは具体的に何を指すのか。VN30との違いは何か。HNX-IndexやUPCoM-Indexはどう異なるのか──こうした疑問をお持ちの方は少なくないと思います。

本記事では、ベトナム株式市場の代表的な4つの指数について、その構造と意味を、日本の個人投資家の方向けに整理してお届けします。

なお、本記事は事実報道です。特定の銘柄や指数連動商品の売買を推奨するものではありません。

目次

1. VN-Index──ベトナム株の代表指数

基本情報

VN-Indexは、HOSE(ホーチミン証券取引所)に上場する全銘柄の動向を示す代表的な株価指数です。ベトナム経済全体を反映する指標として、国内外のメディアで最も頻繁に参照されています。

  • 算出開始:2000年7月28日
  • 算出主体:HOSE
  • 基準値:100ポイント(2000年7月28日基準)
  • 対象:HOSE上場の全普通株式

(出典:HOSE公式・VnExpress・Simplize)

算出方法

VN-Indexは、時価総額加重平均方式で算出されます。HOSE上場の全普通株式の時価総額を、基準日の時価総額と比較する形で計算されます。

2014年以降は浮動株比率(Free Float)を考慮した調整も加えられており、市場で実際に取引可能な株式の動きをより正確に反映する仕組みとなっています。

(出典:HOSE公式)

指数の特徴

VN-Indexは、ベトナム経済の動向を読み解く代表的な指標として、以下の特徴を持っています。

  • ベトナム経済全体を反映する代表的な指標
  • 時価総額の大きい銘柄(大型株)の動きが相対的に大きく影響
  • 海外メディアでも頻繁に報じられる指数
  • 機関投資家・個人投資家共通の参照指標

歴史的な水準

VN-Indexは、ベトナム経済の発展とともに、数々の節目を記録してきました。

  • 2007年:1,170ポイント前後(初期の高値圏)
  • 2018年:1,200ポイント突破
  • 2022年:1,500ポイント突破
  • 2026年5月8日:1,915.37ポイント(史上最高値圏)

(出典:HOSE公式・Vietstock 2026年5月8日)

日本人投資家の活用法

日本の個人投資家にとって、VN-Indexは以下のような場面で有用です。

  • ベトナム株式市場全体の動向把握
  • 個別銘柄の動きとの相対評価
  • 海外ニュースで報じられる指数値の理解
  • 長期的な市場トレンドの観察

重要な注意点

ただし、VN-Indexについて押さえておきたい注意点があります。

第一に、VN-Indexは時価総額加重平均で算出されるため、時価総額の大きい銘柄(VIC、VHM、VCB等)の動きが指数に強く影響します。これは「指数=市場全体の銘柄が均等に動いている」という意味ではありません。

第二に、「VN-Indexの上昇/下落」と「個別投資家の保有銘柄の上昇/下落」は、必ずしも一致しません。指数が上昇していても、ご自身の保有銘柄が下落することは珍しくありません。指数は市場全体の概況を示す指標であり、個別銘柄の動きは企業価値や需給により別個に決まります。

2. VN30──主要30銘柄の代表指数

基本情報

VN30は、HOSE上場銘柄の中から、時価総額・流動性等の基準で選定された主要30銘柄で構成される指数です。機関投資家のベンチマーク、ETFの追跡対象として広く活用されています。

  • 算出開始:2012年2月6日
  • 算出主体:HOSE
  • 基準値:537.32ポイント(2009年7月20日基準)
  • 対象:HOSE上場の主要30銘柄

(出典:HOSE公式・VnExpress)

VN30の選定基準

VN30の構成銘柄は、以下の基準により選定されます。

  • 時価総額の上位
  • 流動性(取引高・取引回数)
  • 浮動株比率
  • HOSE上場であること

これらの基準は、年に2回(1月・7月)の定期見直しで再評価されます。例えば2026年第1四半期の見直しでは、2026年1月19日に新しい構成銘柄リストが公表され、2026年2月2日から有効化されました。この見直しでは、化学最大手のDGC(管理銘柄入りのため)が除外され、Vinpearl(VPL)の新規組入れが議論されました。

(出典:Vietstock・thoibaotaichinhvietnam・dnse)

VN30の特徴

VN30は、ベトナム株式市場の主要大型株指数として、以下の特徴を持っています。

  • 機関投資家の運用ベンチマークとして広く採用
  • ETF(指数連動型上場投資信託)の追跡対象
  • HOSE全体の取引高のうち、約50-60%をVN30銘柄が占める
  • 派生商品(VN30先物等)の対象指数でもある
  • 2025年:VN30は約+51%、VN-Indexは約+41%(参考値)

(出典:thoibaotaichinhvietnam・dnse)

構成銘柄(事実列挙)

VN30の構成銘柄を、業種別に整理すると、以下のような銘柄が含まれています(2026年時点の参考)。

  • 銀行:VCB、BID、CTG、TCB、MBB、ACB、STB等
  • 不動産:VIC、VHM、VRE、KDH等
  • 鉄鋼・素材:HPG、GVR等
  • 消費財・小売:MWG、MSN、SAB等
  • IT:FPT等
  • エネルギー:GAS、PLX、POW等

(出典:HOSE公式・最新の見直しはVietstock等を参照)

これら30銘柄が、HOSE市場の時価総額のうち相当な割合を占めています。2026年4月末時点の参考値として、HOSE全市場の時価総額が約419億USDであるのに対し、VN30の時価総額は約249億USDで、市場全体の約59%を占めています。

(出典:Vietstock・SHS Securities)

VN-IndexとVN30の使い分け

VN-IndexとVN30の関係は、以下のように整理できます。

  • VN-Index:HOSE全銘柄(約400銘柄)の動向を示す
  • VN30:HOSE主要30銘柄に絞った動向を示す
  • 両者の連動性は高いが、動きには差がある場合も
  • 機関投資家はベンチマークとしてVN30を重視する傾向

VN30追跡ETF(事実列挙)

VN30の動きに連動することを目指したETFとして、ベトナム国内で運用されている以下が知られています。

  • E1VFVN30(ベトナム籍ETF)
  • DCVFMVN30(ベトナム籍ETF)

これらのETFは、VN30の構成銘柄に連動した運用を行うことを目指しています。具体的な運用方針・コスト等は、各ETFの公式情報をご確認ください。

★最重要警告──VN30の構成銘柄は推奨銘柄ではありません

VN30に関して、最も重要な点を明確にしておきます。

VN30の構成銘柄は、「投資推奨銘柄」ではありません。

VN30は、時価総額・流動性等の客観的な指数算出基準により機械的に選定される銘柄群であり、各銘柄の投資価値や将来の株価動向を保証するものではありません。

「VN30に含まれているから値上がりする」「VN30銘柄なら安定している」という認識は、過去にも数多くの投資家が経験した認識違いです。

VN30の構成銘柄であっても、企業の業績悪化や市場環境の変化により、株価が大幅に下落した事例は数多く存在します。例えば、2026年初の見直しで管理銘柄入りのため除外されたDGCのように、VN30に組入れられている期間中であっても、企業固有のリスクが顕在化する可能性は常にあります。

個別銘柄の投資判断は、VN30への組入れの有無とは別個に、各企業の業績・財務状況・将来見通し・市場環境等を総合的に判断する必要があります。

3. HNX-Index──ハノイ市場の動向指数

基本情報

HNX-Indexは、HNX(ハノイ証券取引所)に上場する全銘柄の動向を示す指数です。HOSEに比べて中堅・成長企業が多いHNX市場の動きを反映します。

  • 算出開始:2005年7月14日
  • 算出主体:HNX
  • 基準値:100ポイント
  • 対象:HNX上場の全普通株式

(出典:HNX公式)

算出方法

HNX-Indexは、HOSEのVN-Indexと同様に、時価総額加重平均方式で算出されます。算出の基本構造はVN-Indexと共通しています。

HNX-Indexの特徴

  • HNX市場(中堅・成長企業中心)の動向を反映
  • VN-Indexより時価総額規模が小さい
  • 個人投資家の動向を相対的に強く反映する傾向
  • HOSE市場とは異なる動きを示す場合がある

HNX30

HNX市場にも、VN30に相当する主要銘柄指数として「HNX30」が存在します。

  • 算出開始:2012年7月
  • 対象:HNX上場の主要30銘柄

主要構成銘柄(事実列挙)

HNX-Index・HNX30に含まれる主要な銘柄として、以下が挙げられます。

  • SHB(銀行)
  • PVS(石油サービス)
  • CEO(不動産)
  • IDC(産業団地)

観察の注意点

HNX-Indexは、VN-Indexとの連動性はあるものの、動きに差が生じる場合があります。HOSE中心の機関投資家からの注目度は相対的に低い傾向にありますが、ベトナムの中堅・成長企業の動向を観察する上では有用な指標です。

4. UPCoM-Index──店頭市場の動向指数

基本情報

UPCoM-Indexは、UPCoM(店頭市場)に登録される全銘柄の動向を示す指数です。UPCoMはHNXが運営する店頭市場で、約900銘柄超が登録されています。

  • 算出開始:2009年6月24日
  • 算出主体:HNX(UPCoM運営)
  • 基準値:100ポイント
  • 対象:UPCoM登録の全銘柄

(出典:HNX公式・vnsc.vn)

UPCoM-Indexの特徴

  • 店頭市場全体の動向を示す
  • 多種多様な規模・業種の企業が含まれる
  • 銘柄により流動性に大きな差
  • 大型銘柄(BSR、ACV等)の影響が相対的に大きい

UPCoM Premium

UPCoM内には、財務状況・情報開示水準が一定の水準を満たす銘柄群を集めた「UPCoM Premium」という制度もあります。UPCoM全体に比べて、相対的に情報の透明性が高い銘柄が選定されています。

主要構成銘柄(事実列挙)

  • BSR(石油精製)
  • ACV(空港運営)
  • VEA(機械・農業機械)

観察の注意点

UPCoM-Indexは、機関投資家の関心が相対的に限定的な指数です。個別銘柄の動きが指数に反映されにくい場合や、流動性の低さから取引困難な銘柄が含まれる場合もあります。投資対象としては、各銘柄の流動性・情報開示水準を慎重に確認する必要があります。

5. 4指数の比較表

ここまでの内容を、表形式で整理します。

指数 対象市場 算出開始 構成銘柄数 主な特徴
VN-Index HOSE全銘柄 2000年7月 約400銘柄 ベトナム代表指数
VN30 HOSE主要30 2012年2月 30銘柄 機関投資家ベンチマーク
HNX-Index HNX全銘柄 2005年7月 約340銘柄 ハノイ市場の動向
UPCoM-Index UPCoM全銘柄 2009年6月 約900銘柄超 店頭市場の動向

(出典:HOSE・HNX各公式・Vietstock等)

4指数を比較すると、それぞれ異なる役割を担っていることが分かります。VN-Indexはベトナム株式市場の代表的な指標として国内外で参照され、VN30は主要大型株の動きをより明確に示します。HNX-Indexは中堅・成長企業の動向、UPCoM-Indexは店頭市場の動向を反映します。

機関投資家の注目度や流動性の観点では、VN-Index・VN30が最も高く、HNX-Index・UPCoM-Indexは相対的に限定的です。ETFの追跡対象としても、現在ベトナム国内で運用されているETFの多くはVN30を対象としています。

6. 日本人投資家の指数活用・5つのポイント

ポイント1:ニュースの理解

「VN-Index ○○ポイント」「VN-Indexが史上最高値」といったニュースの意味を正確に理解することが、ベトナム株式市場を観察する第一歩です。

例えば、「VN-Indexが史上最高値1,915.37ポイントを記録」というニュースは、HOSE全銘柄の時価総額加重平均が、2000年7月28日の100ポイントから約19倍に成長したという事実を示しています。ただし、この数字は市場全体の動きを示すものであり、個別銘柄の値動きとは別個です。

ポイント2:個別銘柄との相対評価

個別銘柄を保有している場合、その銘柄の動きとVN-Index・VN30の動きを比較することで、相対的なパフォーマンスを観察できます。

例えば、保有銘柄が10%上昇する一方、VN-Indexが20%上昇している場合、市場平均と比べて保有銘柄のパフォーマンスは相対的に弱い、という観察が可能です。ただし、これは投資判断の材料の一つに過ぎず、個別銘柄の動きは企業価値や需給の影響を強く受けます。

ポイント3:ETF経由の投資検討

VN30に連動するETF(E1VFVN30、DCVFMVN30等)はベトナム国内で運用されています。海外籍ETFを通じてベトナム株市場全体に分散投資する選択肢も存在します。具体的な投資方法は、別記事「日本からのベトナム株投資──直接投資・ETF・投資信託の3つの方法と実務の整理」をご参照ください。

ポイント4:FTSE新興国昇格との関係

2026年9月21日に発効するFTSE新興国市場昇格に関連して、FTSE Russellが算出するベトナム関連指数(FTSE Vietnam Index等)が話題に上ることがあります。

ここで注意したいのは、FTSE Russell算出の指数と、HOSEが算出するVN-Index・VN30は、別個の指数であるという点です。両者は対象範囲・選定基準・算出方法が異なります。FTSE関連指数は海外のパッシブ追跡資金の対象として、VN-Index・VN30は国内市場の動向指標として、それぞれ別の役割を持っています。

ポイント5:★最重要──指数を「投資判断」と混同しない

本記事の中で、最も強調しておきたいのが、この第5ポイントです。

指数は、市場全体または特定セグメントの「気温計」のようなものであり、個別銘柄の選定基準ではありません。

VN30の構成銘柄であっても、それが「買うべき銘柄」を意味するわけではありません。VN30は時価総額・流動性で機械的に選定される指数構成銘柄であり、個別銘柄の投資価値は別個の判断材料となります。

「指数が上昇している」「VN30に含まれている」という事実だけで投資判断を行うことは、過去にも数多くの投資家が経験した誤った認識です。指数の動きは市場の文脈を理解する手がかりであり、個別銘柄の投資判断は、企業の業績・財務状況・将来見通し等を総合的に判断する別個のプロセスです。

7. 編集員リンの観察

私が証券会社で働いていた頃、お客様から「VN-Indexが上がっているのに、自分の保有銘柄は下がっている」というご相談をよく受けました。

これは、VN-Indexがベトナム株式市場全体の代表指数である一方、個別銘柄の動きは必ずしも指数と一致しないためです。指数は市場全体の「気温」のようなもので、個別銘柄の「体感温度」とは異なります。

私自身、ニュースで「VN-Indexが過去最高値を更新」と報じられても、それを個別の投資判断と直結させないよう注意しています。指数は文脈、個別銘柄はそれぞれの企業価値、と分けて考えることが大切だと、── 私はそう思います。

2018年に大学2年生だった私が、いまベトナム資産形成研究所の編集員として、VN-Indexが史上最高値圏で推移するこの瞬間に立ち会っています。指数の数字を見るたびに、それが「ベトナム経済全体の気温計」であることを、改めて意識しています。日々の市場動向を観察しながら、ベトナム経済の体温を、ハノイから皆様にお届けしていきたいと考えています。

── リン

8. まとめ

本記事では、ベトナム株式市場の代表的な4つの指数(VN-Index・VN30・HNX-Index・UPCoM-Index)の構造と特徴を、日本の個人投資家の方向けに整理してきました。

ポイントを整理すると、以下の通りです。

  • VN-Index:HOSE全銘柄の動向を示すベトナム代表指数(2000年7月算出開始)
  • VN30:HOSE主要30銘柄の指数、機関投資家ベンチマーク(2012年2月算出開始)
  • HNX-Index:HNX市場(中堅・成長企業)の動向(2005年7月算出開始)
  • UPCoM-Index:UPCoM(店頭市場)の動向(2009年6月算出開始)
  • 指数は市場の「気温計」、個別銘柄の動きとは別個
  • VN30の構成銘柄=推奨銘柄ではない

4つの指数の構造を理解することは、ベトナム株式市場のニュースを正確に読み解き、個別銘柄の動きを相対的に評価する上で、重要な基礎となります。

ただし、指数の動きと個別銘柄の動きは別個であり、指数の構成銘柄であることが投資推奨を意味するものではありません。投資判断は、各銘柄の業績・財務状況・将来見通し等を総合的に検討する、別個のプロセスとなります。


関連記事──5記事連載のご案内

本記事は、ベトナム資産形成研究所による「ベトナム株式市場の基礎ガイド」5記事連載の最終記事です。連載記事を順にお読みいただくことで、ベトナム株式市場の構造を体系的に理解いただけます。

  • 第1記事「ベトナム株式市場、FTSE新興国市場昇格が確定──2026年9月21日発効・60億ドル流入予測」(2026年5月8日公開)
  • 第2記事「VN-Index、史上最高値を3日連続更新──5月8日1,915.37pt到達」(2026年5月9日公開)
  • 第3記事「ベトナム株式市場の基礎知識──HOSE・HNX・UPCoMの違いと投資の入口」(2026年5月10日公開)
  • 第4記事「日本からのベトナム株投資──直接投資・ETF・投資信託の3つの方法と実務の整理」(2026年5月12日公開)
  • 第5記事(本記事)「ベトナム株の代表指数を読み解く──VN-Index・VN30・HNX-Index・UPCoM-Indexの構造と意味」(2026年5月14日公開)

次回以降は、ベトナム経済の構造的成長要因や、個別企業の構造分析等を予定しています。引き続きご注目ください。


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